オトリ在庫とは何ですか?

オトリ在庫ということばを聞いたことはあるでしょうか。オトリというのは、誰かを誘い寄せるために仕組まれた見せかけの物を指します。中古車購入の場合、オトリというのは「安くて、きれいで、人気車種で、高性能の、こんな嬉しい中古車がこの世にあるの！」という中古車を一台掲載しておき、中古車購入を考えている人の目を引くことを指します。そして来店した客に、別の中古車を勧めるのです。これは実物を並べている実店舗でもたまにあるそうですが、よくあるのは、ネット販売や雑誌かチラシ掲載の場合です。情報としてすごくお買い得な中古車があると宣伝しておいて、集客するわけです。「オレオレ詐欺」的な口の上手さにすぐにその気にさせられるタイプの人には、中古車購入に当たってはオトリ在庫は特に大きな注意点です。
スーパーの食品や日用品の目玉商品を広告で見つけて、我先にと駆けつける心理状態に似て、安い！ほしい！と感じて駆けつける中古車購入希望者は、自分一人ではありません。大勢が押しかけてたった一台の中古車を取り合うなど、考えられません。一人の客が購入すれば、それでその一件はお終いです。そのことは重々承知の上で、店に多くの客が来てほしいと考えて、こうしたオトリの一台を置くのです。
このようなオトリの在庫は違法です。それでもウソは何とでもつけますから、広告を見て急いで駆けつけた客に「どうしてないんですか」と詰め寄られても、「申し訳ありませんが、つい先ほど売れました」とか弁解され、「せっかく来てくださったのですから、他にこんなのがありますが、いかがでしょう」…と。そんな罠にははまらないぞと事前に電話して確認しても、店に到着したら、「ああ、たった今売れてしまいまして…」となります。中古車購入はスーパーで野菜を買うのとは違いますから、レジに持っていってそれで精算済みということにはなりません。もしほんとにたった今売れたのなら、購入した客はまだ店内で手続き中のはずです。この種の「在庫ある・ない」の問題はその店のモラルを問うています。